長らく放置されていた三角形の空き地を、街の憩いの場に──。芝生スペースを備えたこたま食堂が5月26日、和歌山市中島にオープンした。家族で店を立ち上げたデザイナーの大硲神(おおさこ・じん)さんは「宮前地区は住宅も子どもも多いのに、広場や公園が少ないと感じました。街のほっとできる場所にしたい」と意気込む。
芝生スペース併設 こたま食堂開店
大硲さんの実家はかつて海南市で20年間、洋食店「グリル玉ちゃん」を営んでいた。コックだった父、玉夫さんの病気で11年前に店を畳んだものの、大硲さんは「いつか再開できれば」と考えていた。
この話を聞いた知人が一昨年末、大硲さんに建築士の岩西智宏さんを紹介。岩西さんから「祖母が持っている土地があり、『街の人のために何かできないか』と言っている」との話を聞いたことが開店の後押しになった。
三角形の土地60坪の中に、三角形の店舗を岩西さんが設計した。地域住民や学校帰りの子どもたちもゆったり自由に過ごせる場所にと、芝生を設けた。
すぐ側を走るJRきのくに線の電車や芝生を眺められるよう、建物は壁をガラス張りにし、住宅地の中でひときわ目立つ空間に仕上げた。岩西さんは「以前から愛着を持って、〝宮前デルタ〟と呼んでいた場所。89歳の祖母は『街の景色が変わった』ととても喜んでいます」と声を弾ませる。
食堂は〝母の味〟をコンセプトに、大硲さんの母、和恵さんが店長を務める。新鮮な野菜をふんだんに使ったカレーや唐揚げ、ハンバーグなど家庭料理が中心で、持ち帰りの総菜やドリンクも。大硲さんは「いつか、『子どものころによく来たな』と、大人になってからも帰ってきてくれるような店になれば」と描いている。
午前11時〜午後6時。木曜、第4水曜休み。同店(073・488・3130)。
(ニュース和歌山/2017年6月10日更新)