1月第2月曜は「成人の日」。新型コロナウイルスの影響で、成人式の中止や延期が発表されている市町村もあり、不安がつきまとうご時世ですが、新たな大人の一員として、前に進んでいる和歌山大学の学生3人を紹介します。

 

目指すは神宮 最高の舞台へ 硬式野球部副主将 金谷温宜(はるき)さん

 和歌山大学硬式野球部副主将で外野手。神宮球場で開かれる全日本大学野球選手権への出場にかける。「昨年、一昨年は春、秋のリーグ戦でいずれも2位。次こそはリーグを突破し、神宮へ行きたい」と闘志は充分だ。

 小学3年で野球を始め、高校は地元岡山の強豪、創志学園に入学した。1年秋からレギュラー入りし、2年の春に選抜出場。3年の夏にはキャプテンとして、再び甲子園の土を踏んだ。

 和歌山大学には一昨年、スポーツ推薦で入学した。他の競技も含め4枠しかない狭き門。高校時代、野球部の先輩から、和大硬式野球部は監督が試合中にサインを出さず、自分たちの感覚を信じ、戦況を見て行動する、〝考える野球〟がスタイルと聞いた。これまでと違う野球に魅力を感じ、志望した。

 初めは暗中模索。感覚でプレーすると言っても何をどうしていいか分からず、練習後、ミーティングでの意見交換は毎回真剣だった。試合前の打ち合わせで動きを話し合い、場面による選手同士の動きを察知し、臨機応変にプレーできるようになった。

 しかし、昨年は新型コロナの感染拡大で練習が完全に禁止され、春のリーグ戦は行われなかった。野球ができなかったつらい時期を経験し、「今はとにかく、みんなで野球をする時間を大切にしたい」との一心だ。
 小学校から高校までキャプテン、今は副主将と学年キャプテンを任されており、チーム全体を支える。「仲間のことを見て、考え、連携する機会が多かった。野球で学んだ経験を生かし、人を思い、役に立てる仕事がしたい」

写真=コロナ禍でも神宮への思いは熱いまま

 

縁を結ぶ場所作り 観光学部 上村加奈さん

 「とにかく和歌山が大好き。海外の人に地元を知ってもらいたいんです」。その思いを〝おむすび〟で実現しようと奮闘する。

 橋本市に住む和歌山大学観光学部2年。2018年に大学の先輩がかつらぎ町にある古民家をゲストハウスにリノベーション。その隣りにおむすび屋を作る構想に参加し、今は主にプロジェクトの発信を担当する。「人と人との縁を〝むすぶ〟のが目的。高野山をツーリングする人たちが休憩し、地元の方々が遊びに来れるような場所になれば」と笑う。

 元々あった倉庫をリフォームして店にする予定で、来年オープンを目指し、まもなく費用を集めるクラウドファンディングをスタートさせる。屋根はかやぶきにするため、今月と来月、生石高原でかやを刈るイベントを計画中だ。

 将来は、和歌山の魅力を県外だけでなく、海外にも届けられ、地域環境や観光に貢献できる仕事に就くのが夢。「世界に誇れる遺産がある和歌山。もっとPRして、県内外、国内外の人に遊びにきてほしい」と目を輝かせる。

 

学生社長 今年は武者修行 教育学部 中澤怜士さん

 差し出した名刺には「株式会社wacorde代表取締役」の肩書き。学生と地元企業をつなぐ会社を経営する。

 高校生のころ、アップル社のスティーブ・ジョブズや自動車会社テスラのCEO、イーロン・マスクの発言力にあこがれた。和歌山大学教育学部に進んだのは、人に物事を伝える方法を学ぶため。起業を志し、同じ情熱を持つ学生団体に参加した。一昨年、若い才能を探していた東京のベンチャー企業から融資を持ちかけられ、仲間と会社を立ち上げた。

 事業案が定まらず苦戦したが、昨年10月に会社を設立。就職活動の際、和大生に地元企業を知ってもらうため、インターンシップや就活情報をSNSで拡散し、広告掲載で利益を生もうと考えた。

 しかし、やりたいことや運営に対して社員と意見が合わず、気付けば一人に。「一人で走り、周りが見えなくなっていた。今年はイチから勉強し直す」と1年間の休学を決断した。東京で事業を続けつつ、武者修行するつもりだ。「自信を持って〝起業家〟と名乗れるよう環境を変える。まずはwacordeの売上1000万を目指します」

(ニュース和歌山/2021年1月9日更新)