未来の地球を少しでも守れるように、召し上がっていただく皆様の健康を守れるように──。そんな理念を掲げ、農薬や除草剤を使わない紀の川筋の農家で結成する「紀州農レンジャー」がこの春、10周年を迎えた。毎週1回、持ち寄った新鮮な収穫物を段ボール箱に詰め、和歌山県内外の個人宅へ発送するほか、各地で開かれるマルシェに出店し、無農薬で育てた青果のおいしさを広める。
新たに加工品プロジェクト
スナップエンドウに赤空豆、葉玉ねぎ…。毎週金曜午後、収穫したばかりの作物を手に、隊員たちは紀の川市の米市農園に集まる。箱に詰め込んだ野菜は約10種。一人ひとりが栽培する農作物は限られるが、連携することでバラエティ豊かになる。2代目代表の片山篤さん(55)は「『ここの野菜は味が濃い』と言ってもらえたのは印象深いですね」と笑顔を見せる。
2011年結成の農レンジャー、入隊条件は農薬と除草剤は使わない、無肥料または植物性の有機肥料を使うこと。隊員は入れ替わりを経て、現在は和歌山市から橋本市まで8農家10人が活動する。発足当時からのメンバー、小林元さん(40)は「農家同士のつながりはわりとなく、無農薬となるとさらに少ない。そんな中でざっくばらんに栽培方法の情報交換ができています」と語る。
この春には新レンジャー2人が入隊した。下坊康博さん(39)は4月に就農したばかりで、「皆さん、それぞれ自分の販路を持っている。栽培方法に加え、自分の野菜をどうアピールしていくか、勉強していきたい」。白﨑海さん(30)は「新型コロナウイルスの流行もあり、食べる物への意識が高まっているように感じる。まずは和歌山で、さらに全国でもっと必要とされるグループになれるように」と目を輝かせる。
10周年を迎え、動画サイト、ユーチューブを活用しての情報発信に力を入れるほか、新たな取り組みとして、隊員全員が各自の農園で唐辛子の栽培を始めた。秋に乾燥させたもの、または一味唐辛子に加工して販売する計画。播本知嗣さん(35)は「唐辛子は無農薬で育てやすく、農園により収穫時期が多少ずれても、乾燥しておけば同じ時期に出せる。また、収穫できる農作物の品数が減る端境期に野菜ボックスにも入れられます」と話す。
加工品については各農家でおかきやポンポン菓子、切り干し大根などを作っているが、「全員で同じ物というのはなかった。農レンジャーブランドの加工品に仕上げるプロジェクトのスタート」と片山代表。「作り手は地球環境に配慮した方法で食べ物を育む。食べる人はそんな作り手を応援することで一緒に自然環境について考え、守ることができると思います」
ヒーローたちはまっすぐ、未来の地球を見つめている。
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野菜ボックスは1500円。希望者は片山代表(aknouenn@gmail.com)。5月30日㊐午前10時〜午後3時に和歌山市七番丁のロイネット広場で開かれる「プティatataマルシェ」、6月13日㊐午前11時〜午後4時に本町公園で予定される「てとこと市」に出店。毎週月曜午前11時から2時間程度、ロイネット広場で、水曜午前11時半から1時間程度、ぶらくり丁のぶらくりきっちん前でも販売。
(ニュース和歌山/2021年5月22日更新)