結婚をはじめ人生の節目を和歌山城で飾ってもらう試みが動き出している。天守閣前の売店「お天守茶屋」はカメラマンと連携し、城内の豊かなロケーションを背景に写真を残し、思い出づくりのお手伝いをスタート。着物を通じ和歌山の活性化を目指すKIYORA和歌山は、お城や地元の名所での結婚式、イベント実施を目指す。絵になるお城を生かし、魅力発信を図る。

結婚写真、催しに試み〜2団体 思い出づくりお手伝い

 「お天守茶屋」は2018年に開店。忍者姿での天守閣への登城支援など和歌山城の磨き上げに努める城プロジェクトの運営で、土産品を販売し、食事を提供する。店主の川島寛子さんは「お城でその時だけの写真を撮影し、思い出づくりにつなげてもらえないか」とのアイデアを育んでいた。同じ思いを抱き、和歌山市でブライダル事業を行うオフィスC&Nの三浦誠夫さんと知り合い、写真撮影をメーンにしたメモリアルフォト事業を6月に立ち上げた。

紅葉渓を背景に美しく

 対象は、結婚、同窓会や還暦祝い、家族の記念など。衣装は市観光協会から借り、プロカメラマンが撮影する。

 「一ノ橋、紅葉渓、天守閣前と素晴らしい場所は多い。記念になる写真を通じ、お城の良さを感じてもらえると思った」と三浦さん。「プロポーズの瞬間でもいいし、家族で毎年同じ場所で撮影してもいい。それぞれが自由に思い出づくりを楽しんでもらえたら」

 写真撮影に合わせ記念イベントもサポート。お天守茶屋を拠点に天守閣前広場での人前結婚式や茶話会など依頼者の提案にそって協力する。川島さんは「人生の節目でお城に来てもらうことで、地域活性化と人のつながりが同時にできる。ぜひ発展させたい」と語る。費用など詳細はお天守茶屋(073・488・7640)。

 一方、KIYORA和歌山は、和歌山城をメーンに名所での結婚式やイベント開催を模索する。

 同会は街中での着物ファッションショーや、小中高生対象の着付け授業に取り組み、外国人観光客が浴衣でお城を散策するサポートも行った。

 和歌山城での結婚式を思い立ったのは3年前。中国から結婚写真の撮影に来た男女に付き添ったのがきっかけだ。京都、大阪で結婚写真を撮影する中国人が多いと知った。代表の植野千惠子さんは「ならば、お城の天守閣で結婚式ができたら注目される」と考えた。

天守閣最上階で開かれた式。観光客も見守った

 構想を温め、天守閣で結婚式が開けるよう市に要望したところ、4月11日に市の協力のもと試験的に実施した。

 最上階の一角に紅白の幕を垂らし、赤いじゅうたんを敷き、実際のカップルを迎え花束贈呈や誓いの言葉などオリジナルの内容で20分の式を行った。

 観光客からも祝福の声が飛び、新郎新婦は「知らない人からの『おめでとう』の声がうれしかった」「素晴らしい場で式ができ、一生の記念になった」と笑顔。参加者には「こんな結婚式は初めて」と好評だった。

 ただ天守閣での結婚式は城の活用を定めた市の条例上、本格実施に課題が多い。同会は今後、カップルを募り、城内の別の場所で開催を模索する。植野さんは「天守閣で行いたい思いはあるが、和歌山には城に加え、片男波や番所庭園などいい場所は多い。2人の思い出に残る式を行い、名所の発信、家族の物語づくりになれば。海外にもその魅力が伝わってほしい」と望む。詳細はKIYORA和歌山(同445・4380)。

 同市城整備企画課は「いずれも夢のある街にする真摯な取り組み。城を多目的に利用する試みは他の城でもなされ、要望もある。今後、城の整備を考えるうえで、こういう声は検討する必要がある」と話している。

(ニュース和歌山/2021年6月12日更新)