風土記の丘 動画公開
引き出しを開閉すると流れるノスタルジックな音色──。紀州の伝統工芸品、桐箪笥(たんす)の一種、ハーモニカ箪笥の音を鳴らす動画を、和歌山市岩橋の紀伊風土記の丘が6月2日、HPで公開した。
引き出し奥に部品を仕込み、開閉時の風圧で音が鳴る仕組み。気密性が高いほど音が大きい。祖父の遺品整理で発見した男性が5月、SNSに投稿し話題になった。
ハーモニカ箪笥を展示する風土記の丘への問い合わせが増えたのを受け、動画を撮影。蘇理剛志学芸員は「2009年に広川町の女性から寄贈されたものを展示した際にも注目を集めました。地元の文化を多くの人に知ってもらいたい」。
和歌山は江戸時代から桐箪笥の産地として知られる。芸術への意識が強まった大正時代、箪笥も見た目の美しさや精巧さが求められるように。桐箪笥を製造する同市のシガ木工、志賀啓二代表は「変形しやすい無垢(むく)材を使っていた当時、きっちり寸法の合った品をつくるには高度な技が必要だった。技術を競う職人が、音で気密性の高さが分かるよう仕掛けを付け、その後、他府県に広がったと祖父や父から聞いています」。
富裕層の嫁入り家具として人気だったが、時代の変化で売上は減少。戦後に合板で大量生産された箪笥が流通し、職人が技術を競う必要がなくなり、ハーモニカ箪笥はつくられなくなった。
志賀代表は「20年ほど前に小箱サイズのものを復刻させたこともありますが、開閉のたびに音が鳴るものは今の世の中、使い勝手が良くないようです。これを機に桐箪笥自体が見直されれば」と期待している。
風土記の丘でハーモニカ箪笥の音を聞きたい場合は要相談。
写真=「動画では2さおの箪笥で連弾も」と蘇理学芸員
(ニュース和歌山/2021年6月26日更新)