紀伊風土記の丘資料館の正式名「松下記念資料館」の誕生と秘密を探る展示会が8月29日㊐から、和歌山市岩橋の同館で開かれる。開館50周年記念。図面やパネル、模型を展示し、デザインやモチーフ、建設に至る逸話を紹介する。
同館は1971年、パナソニック創業者で同市出身の松下幸之助が全額寄付し建設された。鉄筋コンクリート平屋地下1階建てで、延べ床面積1687平方㍍。基本構想は大阪万博を手がけた西山夘三(うぞう)、世界的建築家の浦辺鎮太郎が設計した。
建物の背後に古墳群の山が隠れないよう低く建てられ、駐車場から館まで歩く構造は、万博記念公園と同じ。大阪万博の会場を基本設計した西山の考えが反映されていて、同館学芸員の田中元浩さんは「モータリゼーションに偏らず歩くことで人間らしさを回復する考えがある。こういう西山の構想を、強く浦辺が進めました」。
デザインも特徴的で、岩橋千塚の横穴式石室をまね、雑賀崎の青石を外壁に多用。窓の面格子は有本銅鐸にある双頭渦紋をもとにするなど意匠に見られる考古学的モチーフをパネルで解説する。
松下幸之助が当時の大橋正雄知事に浦辺を推した書簡の写しや、今回の調査で県文化財センター近くの県文化財収蔵庫も浦辺の設計と判明した新事実も紹介する。
田中さんは「古墳との調和を目指す考えにふれてほしい。よく見ると奥深い点に着目してもらえれば」と話している。
9月19日㊐まで。午前9時〜午後4時半。190円、高校生以下と65歳以上無料。月曜休館。同館(073・471・6123)。
写真=開館50周年を迎える資料館
(ニュース和歌山/2021年8月28日更新)