じわじわ人気で月60本

 漆器製造の技を生かした「紀州漆器アンブレラ」がじわじわと人気を呼んでいる。昨年発売し、海南市のふるさと納税返礼品に加わった今年春以降、注文が増え、7、8月は各30本、9月は60本以上と売上を伸ばしている。販売する同市下津町のミドリ産商、柳瀬正明会長(81)は「地元の伝統工芸品、漆器の良さを全国へ広めたい」と意気込んでいる。

 同市は昭和30年代まで和傘の産地だったが、洋傘の普及で需要が激減し、職人はいない。漆器産業も市場が縮小している。傘の輸入会社を営む柳瀬さんは、柄に漆加工を施した包丁があると知り、漆器職人の妹背隆雄さん(71)へ相談。両者がコラボした。

 和傘をイメージした赤い傘の持ち手に、漆とウレタンの混合塗料を塗った。下地が見えるよう表面を研ぎ出す根来塗の技法や金粉をあしらう梨地など、職人が1本ずつ手作りした模様が味となる。妹背さんは「美しいツヤ、趣が魅力。傘として日常で親しみ、使い込んでもらえれば」と声を弾ませる。

 赤2種類、黒3種類の計5種類あり、赤と黒がセットの夫婦傘は金銀婚式の贈答品に人気だ。柳瀬さんは「飽和状態にある傘業界も、アイデア次第で地元の文化・産業に貢献できる。雨の日に夫婦で紀州漆器アンブレラを手に、海南の街歩きを楽しんで」と話している。

 各5000円。うるわし館、黒江ぬりもの館で販売。詳細は同社HP

(ニュース和歌山/2021年10月23日更新)