ナラやシイ、カシなど、ドングリがなるブナ科の樹木が枯死する「ナラ枯れ」が紀北で広がっている。カシノナガキクイムシ、通称カシナガが媒介するナラ菌が病原で、和歌山県内は1999年に新宮市熊野川町でこの虫が大発生し、その後、北上。今は紀の川筋で多く見られ、根来山げんきの森や紀伊風土記の丘では被害にあった木の伐採作業に追われている。

紀南から北上 紀北で拡大中~小さな虫カシナガが菌媒介

根来山げんきの森、遊歩道沿いで枯れたコナラ。木の根元にはたまった多くの木くずが

 岩出市北部の根来山げんきの森。遊歩道を歩いていると、所々に切り株が見受けられる。枯れた枝が落ち、散策者がケガしないよう、伐採した跡だ。森を管理するげんきの森倶楽部事務局長の岡田和久さんは「カシナガが侵入した痕跡は2018年から確認していましたが、枯れ始めたのは2年前です。一昨年は30本、昨年は70本ほどと、把握しているだけで約100本に上ります」。

 和歌山市の紀伊風土記の丘や海南市の孟子不動谷も2年前から被害が目立つ。風土記の丘は一昨年、資料館のある辺りから西側だけだったが、昨年は東側へと拡大。現在、万葉植物園の一部エリアを通行禁止にしている。同施設の植物を担当する松下太さんは「強風の後は大きな枝が折れて落下し、通路をふさぐこともしばしば。少しずつ伐採してはいますが、焼け石に水で、被害は目を覆うものがあります」。

被害にあった木には小さい穴が

 県森林整備課によると、カシナガによるナラ枯れは1980年ごろから全国で拡大。県内では99年に熊野川町で発生した後、北へと被害が及んでおり、「今のピークは紀北です」。この虫が入った木には直径2㍉ほどの穴が多くあるほか、根元や幹に木くずが見られる。木の中から移動しない11~5月に伐採し、焼却するのが望ましい。

 カシナガが好むのは、枝や幹が太い木だ。げんきの森倶楽部の岡田さんは「在来種の虫ですが、昔は木が太くなる前に薪や炭の材料に使っていたため、被害はなかった。今は彼らにとってユートピアのような環境になっているので、ナラ枯れが目立っている」と指摘。「他地域では、4~5年で太い木が枯れて少なくなり、カシナガも減って、被害が収まっている。げんきの森もあと1、2年かと期待しています」

 県森林整備課も「数年前にナラ枯れが広がった紀南や紀中は収束してきている。紀北も落ち着いてくるのでは」と予測する。一方、山に近い住宅地や道路では枯れた枝が落ちてくる危険があることから、「早期対策のためにも情報提供を」と呼びかけている。

 同課(073・441・2975)。

 

カシノナガキクイムシ(カシナガ)

 体長4・3~4・7㍉の小さな虫。木の中で増やしたナラ菌を食べて過ごす。1組の親から30~100匹の子が生まれるほど繁殖力が強い。そのため、ナラ枯れの被害が一気に拡大する。(写真提供=和歌山県森林整備課)

(ニュース和歌山/2022年1月8日更新)