15日 和歌祭 十八番は頭回し 畑中生好さん 戦後復活第1回から参加

 400年を迎える紀州東照宮の祭礼、和歌祭が5月15日㊐に開かれる。戦争による中断期間を経て、復活した昭和23(1948)年の戦後第1回に出演し、令和を迎えた今年も渡御行列に参加する人がいる。和歌浦に住む畑中生好(たかよし)さん(83)だ。「10歳で始め、思い出深いことは色々ありますが、400年の節目に健康でかかわれるのが何よりうれしいことです」。磨き上げた薙刀振(なぎなたふり)の技を披露する。

今年も得意の頭回しで魅了する(紀州東照宮提供)

 和歌祭の渡御行列には、雑賀踊、笛吹、唐船・御船歌など40種目以上ある。このうちの1つ、薙刀振は、手、腕、背中、首など体中を使って薙刀を操る芸で、敵陣へ攻め込む際の勇ましさや力強さを表現する。

 畑中さんは、戦争で和歌祭が中断された1938年生まれ。戦後、祖父の楠五郎さんが薙刀振の責任者を務めていたことから、近所の仲間と一緒に始めた。「学校から帰ってきた後、明光通りにあるお寺で暗くなるまで練習したのを覚えています」。初めて迎えた本番では、得意の頭回しを披露。「今も昔もこの技ができるのは私ぐらいです。観客から『目の前でやってくれ』との意味の合図〝ショモショモ〟と声をかけられましたね」

 その後、大学進学、就職と他府県に出たこともあり、30年近く薙刀振から離れたが、40代後半に再開した。復帰後は後進の育成にも尽力。現在は真夏と真冬を除き毎週日曜午前に練習会を開く。

 畑中さんに教わり、練習を共にする石橋秀昭さん(36)は「技はもちろんのこと、そろった指先、目線、胸の張り方など、細かいところが丁寧で美しい。技術面だけでなく、指導方法も学ばせていただいています」と感謝する。畑中さんも「薙刀を回していない方の手を腰に当てる、曲げる腰の微妙な角度といった細かいところが立ち姿の美しさにつながる。小さい子たちにもそのあたりに気を付けて指導してきました」と話す。

明光通りで多くの観客を前に技を披露する少年時代の畑中さん(畑中さん提供)

 400年となる今年、薙刀振は21人で参加する。自らは裃(かみしも)を着て、頭回し、頭上てのひら回しなどの技で魅せる。紀州東照宮の西川秀大(ひでひろ)宮司(48)は「年間通して練習している数少ない種目の1つ。最も修練が必要な芸で、畑中さんは積み重ねてきた熟練度の高さが魅力です」と語る。畑中さんは「薙刀振以外も含め、ここまでたくさんの種目がある祭りは全国的に珍しいと思う。観客は例年以上に多いはず。『来年以降も和歌浦へ見に行きたい』と思ってもらえる演武を披露します」と張り切っている。

 渡御行列は15日午後0時15分スタート。フォルテワジマから和歌山市役所前まで、技を見せながら練り歩く。今年は45種目あり、薙刀振は38番目に登場する。

(ニュース和歌山/2022年5月14日更新)