センター方式で検討中 自校調理望む市民団体も
和歌山県内30市町村で唯一、中学校での全員給食を実施していない和歌山市。導入に向け動いている市教委は市立中の全生徒分を調理する給食センターを設ける方針を昨年度に示し、今年度中に詳細を決定する。一方、各校に給食棟を設ける自校方式を求める市民団体もある。
現在、同市立中学校の昼食は、生徒が持参する弁当か、業者が届けるデリバリー給食かの選択制となっている。
2019年、市が中学1、2年生の保護者にアンケートをとったところ、7割が給食に賛成と回答。市教委保健給食管理課の福井博之課長は「12年に始めたデリバリーの利用率は現在15%程度。1ヵ月分をまとめて1ヵ月前に申し込む必要があり、使いづらく、全員給食を求める声が多い」と、全校での給食実施を20年度に決定した。
その後の調査で、校内に給食棟を設置できるのが全18校中1校しかないと分かった。学校近くに建てる案も出たが、工場扱いとなり、住宅の多い近隣への建設は難しいと判断。市内の中学生8千人分を作れるセンターを建てる計画だ。
給食の提供方法にはセンター方式、自校方式のほか、調理場のある小学校で、中学校の分も作る親子方式がある。同市をのぞく県内29市町村を見ると、岩出市や紀の川市はセンター、海南市は自校と親子の併用と様々だが、半数以上がセンター方式を採用している。
一方、市民有志でつくる「よりよい中学校給食を考える会」は、自校方式を望んでいる。メンバーの宅田潤司さんは「センター方式だと大量仕入れになる。地元農産物は取り入れられるのか、アレルギーにはどこまで対応してくれるのかなど不安が残る。また、自校方式は調理員の顔が見えるのが安心のひとつ。今は学校給食実施が決まっただけなので、時間をかけて考えてほしい」と10月、署名活動を始めた。
これに対し、同課は「食材は地元の物を積極的に使っていく。アレルギーについては専門部署をつくり、各校の情報をもとに、対象生徒の給食に配慮する」としている。
和歌山市立中学校のうち、加太中学校のみ4年前から、隣の加太小で調理された給食を食べる親子方式を採用。生徒41人は昼食時、小学校へ移動する。事前に行った保護者向けアンケートでは、「給食はありがたい」とする一方、「思春期だからこそ弁当で子どもと向き合いたい」との声もあった。吉川豊校長は「衛生管理や食育、提供方法も大事だが、親子の交流のひとつとして弁当を大切に考える人がいることも忘れないでほしい」と語る。
順調に進めば、26年の2学期から全員給食をスタートできる見込み。福井課長は「校内の設備や、食材運搬用の導線確保など、自校方式に変更するには課題が多い。まずは市の中学全体に、栄養バランスのとれた給食を提供したい」と話している。
(ニュース和歌山/2022年11月12日更新)