“日本のアマルフィ”と注目を集める漁港、和歌山市雑賀崎を中心に撮影された映画『あつい胸さわぎ』が1月27日に全国公開されます。吉田美月喜さんと常盤貴子さんが演じる母娘の視点から、乳がんをテーマに心の成長を描いた作品。見どころと、ロケ地、和歌山の魅力を、主演の吉田さんに聞きました。
日常でいられる町
──雑賀崎、みその商店街、伊太祈曽駅など、和歌山で撮影しました。
「2週間過ごしました。これまで和歌山を訪れたことはありませんでしたが、撮影中にすれ違った人が『がんばってね』『上映したら見に行くよ』と、温かく見守ってくれました。特に魚は毎日食べたいくらいおいしかったです。最終日の夜は母役の常盤さんやスタッフと漁協近くの港で話しながらとれたてを直接購入して、実家に送っていただきました。いろいろなお魚があったんですが、シラスはほとんど私一人でいただきました(笑)」
──撮影の思い出は?
「雑賀崎の空き家にセットを組んで撮影したり、常盤さんと自転車を押しながら町の中を歩いたりしました。バイト先で幼なじみ、ター坊役の佐藤緋美(ひみ)さんに強くあたるシーンで、後ろをのら猫が歩いていたのが印象的です。私が演じた千夏は乳がんという非日常の中で混乱しているのですが、それでものら猫はのんびり歩き、世間は普通の日常を送っている。そうした日常にちゃんといさせてくれる場所だと感じました」
母と娘 成長描く
──千夏は若年性乳がんを患った18歳の少女だそうですね。
「高校を卒業して大人になったと少し浮ついた気持ちながらも、親がいないと何もできない、そんな普通の少女の役。決まった時は実感がありませんでしたが、撮影時は私も18歳で、普段のまま演じられました」
──例えば?
「仲の良い母娘が、恋や乳がんを通してすれ違い、ぶつかりながら成長していきます。役では母親の恋愛に対し、『気持ち悪い』と言う場面がありますが、私自身、母と仲が良く、大好きだからこそ心配する娘の気持ちは共感できました」
──見どころは?
「病気の映画ではなく、18歳の女の子が成長する物語です。恋や乳がんに限らず、人は他人には言いづらいことを持っています。それを時間をかけてゆっくり受け止めようとする人がいること。そして周りが見守り続けてあげるのが大切だと伝わればと思います」
──和歌山の人へ一言。
「女の子や母親だけでなく、男性も含め、すべての人が共感できる作品です。皆さんが普段見ている町並みの中でこの物語が広がり、近くで暮らす家族の姿だと身近に感じてもらいたいです」
吉田美月喜
2003年、東京生まれ。ドラマ「今際の国のアリス」「ドラゴン桜」などの話題作に出演。22年には映画『メイヘムガールズ』で主演を果たす。今年は主演映画『カムイのうた』、『パラダイス/半島』の公開が控えている。
『あつい胸さわぎ』
灯台のある町の古い一軒家で暮らす母・武藤昭子と娘・千夏。芸大に合格し、新生活に心を踊らせていた千夏に、初期の乳がんが見つかる。「おっぱいなくなったら…、もう恋とかムリなんかな?」。幼なじみへの恋心と、女手一つで育ててくれた母への思いに揺れる中、初恋の胸の高まりはいつしか胸さわぎへ変化する──。
吉田美月喜さん、常盤貴子さん、前田敦子さんらが出演。1月27日㊎、イオンシネマ和歌山ほかで公開。
(ニュース和歌山/2023年1月3日更新)