遠方から入学し、野球に勉強に力を注ぐ選手たちのサポート拠点となる智辯和歌山野球部寮「智翔館」。中谷仁監督は「グラウンドや学校だけじゃなく、一緒に暮らすと私生活を全て仲間が見る。そこで信頼関係を築ければ、必ず人として成長する」と力を込める。監督の思いは、選手たちがしっかりと受け止めている。
人としての成長促す
私生活全て野球に直結
「選手ファースト」を基本に、「どう選手を支えるか」を考える中谷監督の思いの一つが、2019年秋にオープンした寮だ。
寮では2年生がリーダーとなり、種々の責任を負う。入学後の1年生が環境に慣れ練習に打ち込めるよう、また、最後の夏に向かう3年生が集中できるよう、フォローする。監督の妻、千保子さんは「礼儀を大切にし、思いやりを持ち気遣いできる人になれるよう指導します」。多田羅浩大外野手は「私生活で気を抜かない。全て野球に直結します」と強調する。生活は効率重視で無駄な上下関係は排除。1年生が先に食事や風呂を済ますこともよくある。
昨年5月には、隣接地にマシン室やヨガスタジオ、リラクゼーション室、酵素風呂などを備えた施設「叶(かの)」を開設。マシン室にはBMLT(初動負荷理論)カムマシンを設置しており、千保子さんは「血中酸素が下がらない状態でトレーニングできるので、疲労回復に効果的。ウォームアップにもクールダウンにも使えます」と説明する。
身体のケアや栄養補給に力
ヨガインストラクターである千保子さんの指導で、選手たちはヨガで体をほぐし、リラックス。身体をケアし、ケガ防止に役立てる。また、酵素風呂の活用で筋温を上げ、疲労回復に努める。
夕食前の午後5時ごろには、「補食」としてご飯や肉料理、卵などをグラウンドに届ける。丈夫な身体作りを支援するためで、寮生以外も対象。選手たちは練習の合間をぬい、瞬く間に胃袋におさめていく。𠮷川泰地投手は「お陰で1年生の時から8㌔大きくなりました」と感謝の気持ちを忘れない。
一方、子どもを預ける保護者に配慮し、ミーティングや食事風景を動画で配信。「どんな生活をしているのか」との不安をなくすためで、保護者は自由に寮へ出入りできる。
様々な角度から選手を見守る中谷監督。「自分たちがサポートできることをさせてもらっているだけ。生活を通し、野球だけでなく人間として成長を」との思いはブレない。
(ニュース和歌山/2023年3月11日更新)
【関連記事】