貝谷郁子さん イタリアの食エッセイ集

 イタリアに魅せられ30年以上通い詰める和歌山市出身の料理研究家、貝谷郁子さん(写真)が4月、書き下ろしエッセイ『パルミジャーノをひとふり~イタリア旅ごはん帖』を亜紀書房から出版した。家庭料理から感じた短編35編を収録。食を自分なりに楽しむ姿を生き生きと描いている。

 仕事で訪れたイタリアで、料理と言葉の響きが気に入った貝谷さん。現地の友人宅やレストランでの味を題材に、パスタやリゾット、パン、サラダなどテーマを設け、特徴や日本の食文化との相違をまとめた。

 例えば、イタリアでは料理に砂糖を使うことはほぼないが、シチリアでは甘酸っぱい味が好まれ、和の料理との親和性を感じたこと。また、レモンの皮を漬け込んだリキュールに、和歌山の家庭で漬ける梅酒との共通点を見たことなどだ。

 さらに、料理をする人もしない人も、食に話を向けると喜んでしゃべってくれたのが印象に残ったことから、「『食は文化』との意識があるため」と分析。「料理を作る時、『こうしなくちゃいけない』と考える人がいるが、このエッセイが気軽に自由に食を楽しむきっかけになれば」と微笑んだ。

 四六判変型、176㌻。1650円。県内主要書店で発売中。

(ニュース和歌山/2023年6月10日更新)