高校生の俳句作句力、鑑賞力を競う俳句甲子園が8月19日、20日に愛媛の松山市で開かれ、県代表の桐蔭高校創作部俳句班、鎌田琉夏さん(3年)が優秀賞、坂下結芽さん(1年)と寺田侑史さん(1年)が入選に輝いた。チームの一体感を作り上げてきた鎌田さんは、「全員で『楽しもう』と臨んだ大会。男女混合チームで色んな視点があり、他部との掛け持ちが多く、経験を俳句に生かせたのが良かった」と振り返る。
大会は1998年に始まり、今年が26回目。全国から26校32チームが参加し、桐蔭は2017年に続き2度目の出場だ。
5人1チームの団体戦で、予選から決勝までの兼題に応じた句を大会前に提出。本番では、先鋒、中堅、大将の3人がそれぞれ句を披露し、質疑応答の上、勝敗が決まる。
県大会予選の大接戦を制した桐蔭は、決勝の橋本を3─0で下し、出場をつかみ取る。「ソクラテス」というインパクトある言葉をうまく使い、「ソクラテスの死は正解かヒヤシンス」(鎌田さん)など句として成立させてきたことが実を結んだ。俳句結社「香雨」同人で、桐蔭外部コーチの永山英樹さんは「質疑応答で相手の句の意図を聞き出し、また、自分の句をきちんと説明できたのが良かった」と見る。
全国大会は、団体戦予選リーグを1ポイント差で突破できなかった。それでも、質疑応答に関し審査員からは、「聞いて欲しいところを聞いてくれた」とのコメントが寄せられた。
個人賞のうち、優秀賞に輝いた鎌田さんの句は「入道雲ロックンロール聞き飽きて」。鎌田さんは「楽しいことが一杯の夏。それが終わる焦燥感、秋にはない寂しさを感じてもらえたらと考えました」。永山さんも「ロックンロールという言葉は、大人は使いこなせない」と賞賛する。
また、入選した坂下さんの句は、「花街の灯に旋回の金亀子(こがねむし)」。「大会は高校生らしさが求められるのでは」と懸念し、団体戦から外した句だ。「『花街』は、現実の自分から遠い存在ながら、マンガを通してつながっています」。寺田さんは「後頭部に芝の感触星月夜」と詠んだ句が選ばれた。「『後頭部』がフレッシュで、うまく使ったと言ってもらいました」。
個人賞3作はいずれも団体戦に使われなかったが、どの句にもメンバーの思いがこもる。大会前に句を持ち寄り、意見を言い合いながら磨き上げ、「チームの句」として提出するからだ。解釈を統一し、誰が意図をたずねられても答えられるよう備えてきた。
大会を終えて鎌田さんは、「日本の四季の美しさに気づくことができました。俳句を一生の友のように続けてもいいかな」とほほえむ。坂下さんは「他の人の句に触れ、質疑応答で作品の面白さを勉強させてもらえました」、寺田さんは「改めて日本の伝統文化の奥深さを知ることができました」と話し、来年の俳句甲子園を見据えている。
(ニュース和歌山/2023年9月30日更新)