外国人と地域結び付け 評価

 紀の川市、岩出市などの那賀地域で暮らす外国人を言葉や生活面で支援する「多文化オアシス☆にほんごおしゃべり会」が10月、「明日のまち・くらしづくり活動賞」で主催者賞に輝いた。あしたの日本を創る協会などが地域の課題解決に取り組む団体、企業を表彰するもので、外国人と地域をつなぐ活動が評価された。創設者で共同代表を務める近畿大学生物理工学部の服部圭子教授は「誰もが地域の一員として生活できる社会の実現に繋げたい」と意気込んでいる。

立冬のこの日は、意味や二十四節気について勉強。その後3~4人のグループに分かれ〝おしゃべり〟した。

 活動は、和歌山市の次に在留外国人が多い那賀地域で2015年、服部教授が日本語教室を立ち上げたのがきっかけだ。翌年、「おしゃべり会」をスタートさせ、宗教上、口にできない食材がある人には、保育所での給食をチェックし、異国で出産することになった人には英語が分かる医師を探し出し、24時間体制でバックアップするなど、日本語学習だけでなく、可能な範囲で生活の不安を取り除き、寄り添った。

 地域に外国人が増えると、「毎日の生活に役立つ日本語を覚えたい」との声が上がってきた。正しい文法で話せなくても、「日本語を使ってやりたいことができるようになろう」をモットーに17年、「多文化オアシス☆にほんごおしゃべり会」を独立させた。意識したのは、日本人が「教えてあげる〝教育〟」でなく、「生活する上で必要な言葉をおしゃべりしながら身に付けられる対等な〝交流活動〟」に重点を置くこと。服部教授は「良好な人間関係を築き、困った時に相談できる〝居場所(オアシス)〟を目指している」と強調する。

日本文化に触れる茶道体験

 以来、活動の幅を広げ、今では「日常的な活動」「研修」「イベント」「多文化共生」を4本柱とする。中心になる日常的な活動は、日本語でおしゃべりしながら情報交換や異文化交流を図り、ふだんの生活を援助。子どもの勉強を見るほか、病院や仕事の情報提供、母国の言葉を教え合うランゲージ・エクスチェンジを行う。また、暮らしの中で使う漢字の学習、警察や消防と連携した防犯、減災講座といった研修会、さらに、互いの国の文化に触れあうイベントの開催や、地域事業への参加を通して多文化共生の街づくりにも取り組む。

 会には韓国やインド、コートジボワールほか、これまで15カ国以上の出身者が参加しており、ボランティア約30人は、会社員や看護師、教員、主婦など多くの職種、年代にまたがる。中でも近畿大学の学生が多く、服部教授は「世界を見据える学生にとっても、国際理解や異文化への寛容性を育む良い機会。加えて、たくさんの社会人との出会いからも学びがある」とメリットを挙げる。

 1年前から参加するベトナム人留学生のレ・タン・クアンさん(20)は、「買い物や病院で使う言葉が分かるようになり、日常会話がスムーズになった」と手応えを語る。13年前に来日し、東北地方に住んだ中国人の王春杰さん(38)は、直後に東日本大震災で被災し、和歌山へ。会設立当初からのメンバーで「大変なことも多かったが、生活や子育ての悩みを相談し、いっぱい助けてもらった。みんな友達みたいでリラックスでき、しゃべることで自然と言葉を覚えた」とほほ笑む。

 受賞にあたり服部教授は、「草の根的に積み上げてきた小さな活動ですが、外国人と共に生きるコミュニティづくりへの挑戦や工夫を評価していただいた」と喜びながら、「夜遅くまで仕事がある、場所が遠いなどの理由で会に参加できない人もいます。企業や行政をさらに巻き込み、地域ぐるみで支援体制を整えることが課題。せっかく住んだ和歌山を好きになり、『心地良い』『長く過ごしたい』と思ってもらえるようにしたい」と力強く話している。

(ニュース和歌山/2023年12月9日更新)