鉄道、ドローン、バス 実証実験

 来年の大阪・関西万博での運行を目指し空飛ぶクルマのテストが進む中、和歌山では南海電気鉄道が電車の自動運転、県立医科大学がドローン自律飛行による配送の実証実験に取り組んでいます。2月には和歌山市が市街地でバスに乗客を乗せた上での自動走行実験を予定。運転士不足による減便や運休、廃線に歯止めをかけると共に、災害時の物流確保、さらに観光地の賑わい創出を視野に、未来の輸送、配送への動きを加速させています。

電車自動走行へ 新レベル2・5

緊急停止ボタンに手を置き、走行を見守る

 南海電鉄は和歌山市駅と和歌山港駅を結ぶ和歌山港線で、自動運転の実証実験を昨年8月末に開始。完全な無人運転ではなく、緊急停止や避難誘導を行う係員が乗る「GOA2・5」レベルです。国家資格である電車運転士を持たない人でも、社内で係員として認定されれば乗務できる予定で、運転士不足の補完として期待されています。

 走行には、前もって加速や減速、停止の地点をプログラム。要所要所に配された地上子(ちじょうし)と呼ばれる装置から走行情報を読み取り運行するシステムです。既に350回以上テストを繰り返しており、今後は、荒天時などの試験を通して、より乗り心地の良さを追求していきます。

車内に設置された走行状態や加減速状況をチェックできるモニター

 同社は「既に導入している自動列車停止装置を活用でき、完全な無人運転より導入しやすい」と利点を挙げ、「自動運転で運転士をなくすのではなく、運転士の負担を軽減して、人員不足による廃線を避け、鉄道を維持するのが目的です」と強調しています。

 本格導入時期は未定ですが、「2031年に大阪でなにわ筋線が開通すると、多くの運転士が必要になります。それまでには間に合わせたい」との意向を示しています。

 

 

 

 

 

 

運転士不在の走行へ第一歩

 和歌山市は2月、JR和歌山駅前から和歌山城までのけやき通りでバスの自動運転を行います。運転手が乗る「レベル2」で、優先ゾーンを乗客18人を乗せて走行。安全性や並走する一般車への影響などを分析します。

 25年度に実験範囲を交通不便地域に拡大。26年度には遠隔監視の下、ドライバーが乗らない「レベル4」をテストし、27年度の本格運行につなげる方針。市は、主要駅と観光地とを結ぶ2次交通として賑わい創出と、交通不便地域の足確保に期待をかけています。

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 実証実験は始まったばかりですが、無人運行が日常風景となる日は、案外近いかも知れません。

 

ドローンとロボ 医薬品を配送

ドローンで運ばれた医薬品を配送ロボに積み替え

 和歌山県立医大が取り組むのは、ドローンによる医薬品配送。大規模災害などで陸路が利用できない時、医療機関や患者の元へスムーズに届けるのが目的です。

 実証実験は昨年3月と10月に実施。3月は目視範囲の無人地帯上空を自律飛行する「レベル2」。和歌川河川公園テニスコートから医大まで約1・5㌔の和歌川上空を、医薬品を乗せ、飛びました。

 10月は目視できない無人地帯上空を自律飛行する、さらに高度な「レベル3相当」に挑戦。日高川町の入野集落センターから約21㌔離れた美山公民館まで日高川上空を飛行。医薬品配送ロボットに積み替え、約150㍍離れた患者役の場所まで届ける実験でした。

 2回とも、医薬品を入れる保冷ボックスの温度やドローンの加速度、揺れなどのデータを収集・分析。今後は、天候など外的要因による飛行条件を始めとする課題への対応を進め、レベル4での実証実験を経て実用化を目指す考えです。

けやき通りを和歌山城まで自動走行予定

 実験を主導した県立医大地域医療支援センター長の上野雅巳教授は「災害時、薬を必要とする患者さんに迅速に届けるインフラを構築しておく必要がある」とキッパリ。今後は「揺れで泡立つとダメになる薬もあるため、さらにデータ蓄積が必要」としながら、「将来は採血を医大へ運ぶほか、医大に来られない患者さんをオンライン診療し、薬を届けるシステムを構築して、医療の地域格差をなくしたい」とビジョンを描きます。

 

 

(ニュース和歌山/2024年1月3日更新)