インターネット上の立体的仮想空間「メタバース」で、アバター(自分の分身)を操作し、自由に動き回る「マインクラフト」、通常の対戦形式だけでなく、自分だけのルールや街並みをつくることができる「フォートナイト」。いずれも世界的に大ヒットしたゲームだ。これらに和歌山を模した空間を再現し、和歌山の魅力を発信しようとする試みが2つ、同時期に行われている。
メタバースでは、ゲームに限らず、アーティストのライブから勉強会、仮想通貨による商品売買まで行われている。中でもブロック型の岩や土、草や木で作られた広大な世界を舞台に、建築をしたり農作物を育てたりできるマインクラフトは、世界中で1億3千万人以上が楽しむほどだ。
ここに和歌山を再現しようと考えているのが和歌山市のeスポーツチーム、和歌山インダミタブルパンダ(=以下WIP)。和歌山のPR活動をするVチューバー(※)がおりんさんの「マインクラフトで和歌山城を作り、作業の様子を見てもらいながら視聴者と和歌山について話したい」との思いを形にしようと、昨年7月から作業を開始した。
WIP創設者の谷本翔太さんは、「がおりんさんの案をベースに、せっかくだから県全域をつくろう」と協力を申し出た。「ゲームを通じて和歌山を元気にしたい」と意気込みを見せる。
現在は城周辺に広がる町を制作中で、4月の完成を目指す。それに先駆け、3月には小学生向けのワークショップを計画。実際に城周辺を歩いて建物を撮影、それを見本に城をつくっていく。谷本さんは「歴史について学べるよう解説を交えて散策する。楽しみながら地元の歴史を勉強してほしい」と考える。
制作中の動画や生配信の視聴はユーチューブで「がおりん 和歌山」と検索。
もう1つ、メタバースを活用し、観光客増を目指すのが、バス・タクシー事業などを展開する同市中之島のユタカ交通(豊田英三社長)だ。まちづくり活動を行う和歌山新城下町DMC(西平都紀子理事長)と「メタバース和歌山」を立ち上げ、フォートナイトに和歌山市の観光地をつくり出す。
フォートナイトは世界で5億人が熱中するアクションゲームで、こちらは和歌山城を再現した仮想の町を構築済み。今月中には和歌山駅周辺や、新内エリアを公開する。仮想空間の和歌山の街並みを使ったオンラインでの大会も開催する。
豊田社長は「仮想の観光体験をし、アニメやドラマの舞台になった場所を訪れる〝聖地巡礼〟のように、『ゲームで遊んだあの街に行ってみよう』と、和歌山に興味をもってもらうきっかけになれば」と期待をかけている。今後は、360度見渡せ、実際に城内にいるような感覚を味わえるVR(仮想現実)動画の作成や、県特産品を購入できる仮想店舗の設置など、さらなる仕掛けを投入していく考えだ。
いずれも取り組みは始まったばかり。城からつくりだした仮想空間を活用し、和歌山を世界へPRするねらいはどこまで達成できるか、今後が注目される。
※Vチューバー=CGなどで作ったキャラクターが配信するユーチューバー
(ニュース和歌山/2024年1月13日更新)