行政、和歌山電鐵との20年評価
廃線の危機にあった貴志川線の存続に尽力し、永続的運営を応援する住民団体「貴志川線の未来を〝つくる〟会」が2月、「地域再生大賞」に輝いた。新聞社などが地域活性化の活動を応援するもので、最高位の大賞は県内初。住民主導で公的支援を引き出し、20年にわたり行政、和歌山電鐵と連携してきた点が評価された。会の木村幹生代表(76、写真)は「何としても残そうと力を入れ、多くの賛同者に助けられました。続けてきて本当に良かった」と目を潤ませた。
2003年11月、南海電鉄が貴志川線から撤退の意向を示した時、「動揺しました。空気や水と同じように当たり前にあるものだと思っていた」と振り返る。早速、沿線住民7人で存続活動を始め、04年9月に同会を結成。年会費1000円で会員を募ると、全国で約6300人にもなった。
高い関心と熱意ある運動により05年、県、和歌山市、貴志川町(現紀の川市)が支援を決め、民間事業者を公募。岡山電気軌道が名乗りをあげ、06年4月、和歌山電鐵として運行を開始した。
その後は、乗客を増やすため沿線の学校、団体を巻き込んでイベントを開くなど、〝乗って残そう貴志川線〟をスローガンに活動を継続。また、行政、電鐵と運営委員会を毎月開き、三者で経営状況を共有し、運営方針の話し合いを続ける。「線路や車両、駅舎を行政が保有し、運行や駅業務を電鐵が担う『公有民営方式』への移行が必要」と強調し、「受賞はいい刺激になった」と熱を込める。
受賞の知らせに同電鐵の山木慶子広報担当(67)は「我がことのようにうれしかった。存続が決まった後も変わらず、共に運営してくれる、他にない住民団体」と喜んだ。
現在、会員は1500人程度となり、利用者も減少傾向にある。木村代表は「このままではまた、いつ危機に直面するか分からない」とし、「地域が一丸となり、まずは乗ってもらえるようアイデアを出していきたい」と気を引きしめている。
(ニュース和歌山/2024年4月6日更新)