絵巻に残るスタイル再現
和歌浦の東照宮を中心に開かれる和歌祭で今年、「猿引(さるひき)」と呼ばれる演目が復興する。徳川家康の霊を慰めるため、元和8(1623)年の祭開始時に登場したが、明治以降は途絶えていた。披露するプロの猿まわし集団、タマツエンタープライズの田松江美子さんは「奉納芸にかかわることができ、身が引き締まります」と思いを口にしている。
猿引は、猿使いの口上や太鼓に合わせ踊りや曲芸をするもので、いわゆる猿まわし。猿は古くから馬の守り神とされ、厩(うまや)の祈祷時に猿まわしが行われていた。また、「厄が〝去る〟」などに通じることから、縁起良い動物と言われる。
和歌祭のうち、復興できていない演目に猿引があるのは分かっていたが、今回、プロの協力で再現が決まった。和歌祭に詳しい和歌山大学の吉村旭輝准教授は「猿には赤いちゃんちゃんこを着せ、裃(かみしも)を身につけた猿使いと練り歩いていたのが、絵巻物から分かりました」と説明。ただ、どんな芸をしていたかは不明で、田松さんは「輪くぐりや高い所での逆立ちなどは昔から続いていますから、それらでは」と推測し、祭で披露する。
当日は、渡御行列の最初の方に登場し、先導役を担う。田松さんは「他にも途絶えている演目がある中で、ご縁をいただきました。地元の方々が100年先を見て活動していますので、私たちも一緒に動いていきたい」と考えている。
和歌祭
5月12日㊐、和歌山市和歌浦西の紀州東照宮と周辺。午前11時~神輿おろし。正午~午後4時、渡御行列(東照宮→和歌浦漁港→片男波→あしべ通り→東照宮)
(ニュース和歌山/2024年5月11日更新)