今ではほとんど見かけることがない超小型自動車を間近に見学できる「マイクロカーミュージアム WAZUKA(ワズカ)」が、海南市日方にある。博物館の扉をひとたび開ければ、おもちゃ箱に迷い込んだかのような世界が広がる。館長の長谷川薫さん(46)は「日本中探しても、ここでしか見られない車ばかりです」とアピールしている。

一瞬のブーム

「大人が楽しむ姿を子どもたちに見せ、まちを元気にしたい」と話す長谷川さん

 マイクロカーは1970年代後半、原付バイクのエンジンと、4輪か3輪の足回りに、ボディ、屋根、ドアを付けた車として発売された。原付免許で運転でき、車検がなく、車庫証明は不要。税金も安く小回りがきくことから、女性を中心に人気だった。

 しかし、84年の道路交通法改正でメリットが少なくなり、相次いでメーカーが撤退。市場は一気に縮小した。

館内には古い看板や近所の方からもらった提灯も

 長谷川さんは高校生だった90年代半ば、近所に放置されていたマイクロカーに出合う。以降、「乗りたい」と憧れを抱き続け、30代半ばになって収集を始めた。当初は、大阪府内の自宅近くで保管していたが、台数が増えてきたことで、「ゆったりと置け、出し入れせずに見てもらえる場所」を探し、海南市の元漆器店倉庫にたどり着く。「歴史を感じさせる黒江の街並みが、レトロなマイクロカーにぴったり」と気に入った。

 2022年11月、自ら倉庫の改装をスタートし、昨年春ごろから徐々に見学を受け始めた。「WAZUKA」は、イタリアのマイクロカー、タイガービート(写真)が飾られていた徳島の喫茶「UZU珈(うずか)」(閉店)と、小さい車から連想する「わずか」とをかけた。

 

 

 

デザイン復刻

 館内にはタイガービートを始め、光岡自動車が最初に手がけたBUBUシャトル、乗りもの館(や)のサイデスカーなど希少な車が並ぶ。どれも40~50年ほど前のものだが、エンジンがかかるように修理した。

 加えて、「懐かしいデザインを復活させたい」と、ナショナルのイメージカラー青白赤とロゴや、山崎製パンのパンを食べる女の子のイラストほかを再現。その際も「ボディを塗りつぶさない」「前所有者が貼った内装をはがさない」と、車がたどってきた〝歴史〟を残すよう心がけている。

SNSで多数の目撃情報が発信される、大人気のナショナル号

 展示は多くて7~8台で、時期によって入れ替える。オープンカータイプのタートルSP2も近日公開予定。

 見学時は、立ち会いの元、運転席でハンドルを握ることができる。「怖がらず座ってもらって大丈夫です」とにっこり。さらに、貴重な資料を手に歴史を説明し、それぞれの車にまつわるエピソードも披露する。

 長谷川さんはこれらの車で海南ほか、和歌山、紀美野など県内をドライブする。「見かけた人が撮影し、SNSに投稿してくれれば、地域の宣伝になる。『海南でしか見られない』強みを生かし、地域を盛り上げたい」と熱を込めている。

 完全予約制。X(旧ツイッター)「@kaorububu501」へメッセージを送る。

(ニュース和歌山/2024年6月1日更新)