カフェ・サウナ併設宿泊施設

 西国三十三所第三番札所、粉河寺の門前に建つ元旅館「三笠館」が改修され、カフェ、サウナ併設の宿泊施設「MIKASAKAN」として6月3日にオープンした。手がけたのは神奈川の不動産会社エンジョイワークスから派遣された永田大樹さんら3人。紀の川市や地域住民と協力し、ここを拠点に周辺の賑わい復活を目指す。

 事業は、粉河寺への参道として栄えたとんまか通りを民間主導で再生するもの。地域活性化起業人として昨年4月、永田さんが着任した。通りにはかつて200店舗がひしめいていたが、いまでは10数店が営業するのみ。市職員の案内で空き店舗を見て回り、再生第一弾として選んだのが、15年ほど前に営業を終え放置されていた築100年以上の三笠館だ。

新装なった施設前でポーズをとる永田さん(左)、三宅さん(中)、小川さん

 館は、4棟のうち2棟は損傷が激しいため取り壊し、道路に面した木造棟にカフェ、奥の鉄筋コンクリート棟にサウナを設け、2階は両方とも宿泊施設にリノベーションした。

 取り壊し中、通りすがりの人に「全部つぶすの?」と聞かれることが多く、「手前と奥は残します」と答えると、安心されることがよくあった。永田さんは「披露宴や宴会に利用した人が多く、思い出が詰まっているようです」と振り返る。

 昨夏には、家具職人の三宅慧(けい)さんが地域おこし協力隊員として大阪から移住し、カフェのテーブルやカウンターなどを製作。DIY講座を開いたり、永田さんと共に粉河祭保存会で活動したりと、地域住民との絆を強めてきた。三宅さんは「外者(そともの)を受け入れてくれる人が多い」と明かす。

 再生にあたり粉河の利点を出し合い、「かつて酒蔵があったほど水が良く、地元フルーツが豊富」なことから、「水を使い、若者に人気のサウナ」と、「地元の果実で作るスイーツを出すカフェ」に決定。3月に赴任した協力隊の小川凛子さんが運営に当たる。

 また、解体した2棟の跡は、マルシェなどのイベントを開けるようウッドデッキを整備。4月に、粉河で撮影された『ふるさとをください』を上映すると、50人以上が訪れたほどだ。

 1年余りでオープンにこぎ着けた。今後、永田さんは「まちづくりに思いのある人を見つけ、粉河の仲間になる人を増やす。3年で軌道に乗せ、その後は地元の人が主体となり運営できる形を作りたい」と見据えている。

(ニュース和歌山/2024年6月8日更新)