フランスで開かれる夏のオリンピックで、パリ中心部を流れるセーヌ川を舞台とする競技の1つが「マラソン・スイミング」。これに海南市出身の南出大伸さん(28、木下グループ)が日本男子でただ1人出場します。2021年の東京オリンピックも経験しましたが、結果は13位。「悔しい思いをしたので、パリでは8位以内入賞が目標。欧米の選手は速いですが、だからと言って絶対勝つとは限らず、可能性はあります」と力を込めています。

自然の中で競技

 海や川など自然の中で競うオープン・ウォーター・スイミング(OWS)。5㌔、10㌔、25㌔などの種目がありますが、オリンピックには2008年の北京から採用されており、種目は10㌔のみ。「マラソン・スイミング」と呼ばれます。

 パリでは、市の中心を流れるセーヌ川に設定された1・67㌔のコースを6周します。プールのようにコースロープはなく、スタート時やブイを回る時は大混雑。南出さんは「選手がより短いルートを取ろうとするため、どうしてもぶつかりやすくなります。遅れないよう、うまく距離を取りながら、ガツガツくる選手にはできるだけ近づかないようにするなど、位置取りが重要です」と強調します。

 また、自然を相手にするため、波や水の流れ、天候にも左右されます。「私は環境に合わせて泳ぐのが得意。波があると速い人のスピードが落ちやすくなるので、より戦いやすいのです」

 さらに、2時間近く泳ぐため、給水も大きな意味を持ちます。「背泳ぎしながら飲むんです。速く飲めればそれだけ時間を短縮できます。もちろん、その逆もあります。スピードは大事ですが、他の要素も勝負に大きくかかわるのが競技の魅力」ときっぱり。

終盤勝負を描く

自然の波や川の流れの中、競い合うのがマラソン・スイミングの魅力

 水泳を始めたのは、海南の巽小1年の時。高学年から50㍍や100㍍のバタフライで大会に出て、巽中時代は200㍍にも挑戦。ですが、海南高2年で、遠距離の1500㍍自由形へ転向します。日体大進学後も同種目をメインにしていましたが、OWSの大会に出場し好成績を残したことで徐々に軸足を移し、2年の終わりにはワールドシリーズに参加できるほどまで成長しました。ただし、この時は、「波にもまれ、人につぶされ…。外国選手のスピードの速さに驚きました」と振り返ります。

 その後も世界で挑戦を続け、卒業後は木下グループに所属。2021年には、念願の東京オリンピック出場を果たしました。残念ながら入賞はかないませんでしたが、ラストスパートで海外の速い選手に競り勝ったことが自信になりました。

 2度目のオリンピックを控え、スピード強化に重点を置きつつ、持久力向上に力を入れてきました。「レースでは、ドラフティングといって人の後ろについて泳ぎ、体力を温存しながらラストスパートに備えます。10㌔近く泳いだ後、力を絞り出しながら競り合うゴール前の姿を見て欲しいですね」

◎男子マラソン・スイミング

8月9日㊎午後2時半スタート(日本時間)。なお、女子は8日㊍午後2時半、蝦名愛梨選手(自衛隊)が出場。

(ニュース和歌山/2024年6月29日更新)