自分の人生  選べる人に

 不登校の子どもや、ひきこもり青年のための居場所を運営するNPO法人「レインボーハウス」(和歌山市弘西)が、4月から利用料(運営協力費)を無料にした。施設長の土井広行さんは、「今までより気軽に足を運んでもらえます」と話している。

 同施設は1997年、不登校の子どもをもつ保護者たちの「子どもが安心して通える『居場所』がほしい」という要望に応えて誕生した。年齢上限を設けず、不登校・ひきこもりであれば誰でも利用できるのが特徴で、多い日で20人前後が訪れる場に成長した。利用料は1回3000円。施設の維持管理などに充ててきた。

自由に過ごす利用者を見守る土井さん(右)

 しかし近年、利用者が大幅に減少。コロナ禍が一段落したにもかかわらず、毎回3人程度に留まっている。土井さんは「親に利用料を払ってもらうのが申し訳なくて、行きたくても行けない子どもや青年がいるのでは」と考え、利用料の廃止に踏み切った。

 土井さんは学生時代から30年以上、不登校の子どもやひきこもりの青年たちの支援に携わっている。目指しているのは、〝自分の人生の主人公に自分がなること〟。「周りの人が喜ぶ人生ではなく、『自分がしたい、取り組みたいことを自分の意志で選ぶ』、そんな人生を送れるようになることが、子どもたちにとってのゴールだと思っています」

 来所を促したり、行動を指示したりは、一切しない。「心がけているのは、自己決定のじゃまをしないことです」。ゲームをする、昼寝をする、スマホで音楽を聴く、絵を描く、プラモデルを作る…。自由に、自分のしたいことをして過ごす一人ひとりに、土井さんは温かな視線を注ぐ。

 30歳代のAさんは、小学校でクラスになじめず不登校に。母親は登校を無理強いすることなく、静かに見守った。「心の中ではやきもきしていたと思うけど、ありがたかった」。6年生のある日、母親に連れられて、レインボーハウスの行事に参加した。ゲームの話題で土井さんと盛り上がったことから顔を出すようになり、仲間もできた。気に入っているのは、「何をしてもいいし、しなくてもいいところ」。20数年をふり返り、「ここは私の人生の一部。楽しいことは全部レインボーハウスと一緒にあった」と笑顔を見せる。

 火曜午前10時~午後3時半、土曜午前10時~午後4時。家族同士の交流会や、個別相談・メール相談も無料で受け付けている。なお、寄付やカンパ、アルミ缶の提供を募っている。土井さん(073・462・3060)。

(ニュース和歌山/2024年7月13日更新)