攻守できるプレイヤーに
スペインサッカー1部リーグで6回の優勝を誇る強豪クラブ「バレンシアCF(VCF)」。同クラブが10ヵ国にある直属の育成組織(アカデミー)から選りすぐったメンバーを対象とする「エリートキャンプ」が6月に1週間、スペイン・バレンシアで開かれ、東和中学校3年の南悠成選手が和歌山から初めて参加した。「体の大きな海外選手と対戦し、守備面で自信がつきました」と成果を語った。
体格差乗り越え
エリートキャンプには8ヵ国から、2008年、09年生まれの18人が招待された。南選手は1月のVCFアカデミージャパンによるスペイン遠征で、同世代の現地チームとの交流戦に出場。4試合4得点と活躍し、現地スタッフの目にとまったのが決め手となった。「手応えはあった。でもやっぱり、参加できると聞いた時は『ラッキー』と思いました」と喜んだ。
日本からは、南選手と群馬の高校1年生、高裕徳(たかゆうと)選手の2人が選ばれた。現地では、VCFアカデミーコーチの指導を受け、ボールを自チームでキープするための技術や試合を想定した攻撃と守備の練習、紅白戦などを行った。
日本では、中盤右側で主に攻撃を担う右サイドハーフを務めるが、キャンプではスピードを買われ、自陣ゴール前を守る右サイドバックを任された。サイドアタッカーの攻撃を止める守備が重要視されるだけでなく、攻撃参加もあり豊富な運動量が求められる。「過去に経験したポジションでしたが、慣れるまで少しかかりました」
加えて、初めて目の当たりにした海外選手の迫力に「最初はビビってしまった」と苦笑いしながら、「もっと強気でいけば良かった」と振り返る。それでも、「大きな選手相手に、どうボールを取るのかを考えました。1人では難しいので、サイドに追い込み複数人ではさむ。言葉は通じませんが、やろうとしていることが味方に伝わり、奪取することができました」と、特に守備面で自信をつけ帰国した。
チームに還元を
年長でボールを蹴り始め、小学校に入ってからは、海南フットボールクラブを母体とするソラティオーラ和歌山に通う。4年から「スペイン式サッカーを学ぶことで、もっと上手になれるのでは」と、VCFアカデミーにも参加。中学からはVCFアカデミーU15で活躍を続ける。
チーム1の足の速さを武器に、ゴールに向かって縦にドリブルし、右足でシュートを放つ形を最も得意とする。利き足は右だが、両足どちらも使える器用さも。西林隼監督は「持ち味を生かし、〝点を取る〟仕事をきっちりする一方で、味方をよく見て、苦しい場面で守備を率先して行うなど、チームに貢献してくれる」と全幅の信頼を寄せる。
スペインで学んだ、サイドバックが相手ゴールに近い位置でボールを持った時のパスの出し方を「取り入れようと思う」と、チームへの還元も忘れない。「個人的には、相手の攻撃時、できるだけ相手陣内でボールを止められるように」と攻撃も守備もできる選手を目指し、来年のキャンプ参加へ意欲を見せる。その先は「まずは日本でJリーガーになりたいです」と夢を描いている。
(ニュース和歌山/2024年7月20日更新)