12月15日『歓喜の歌』で締め 最終公演へ合唱団員募る
年末にベートーヴェンの『交響曲第9番』を歌い続けてきた和歌山県第九合唱団。12月の第50回公演を最後に、その歴史に終止符を打つ。演奏会を主催してきた県第九の会、花光郁(たかし)事務局長(63)は「一般市民がプロのオーケストラと一緒にレベルの高い演奏会を作り上げてきました。地方都市の合唱団が手弁当で半世紀以上も続けてこられたことは誇りです」と感慨にひたっている。
第九演奏会は1972年12月、大阪フィルハーモニー交響楽団と第1回を開催。200人以上が「自由・平等・博愛」をテーマとする『歓喜の歌』を歌い上げた。
初回から参加する山本光子(てるこ)団長(85)は「指揮の外山雄三さんが歌詞を解説し、『何を歌っているのか』『なぜ第九ができたのか』と、意味や歴史を考えさせられました」と振り返る。合唱団の西岡敦子事務局長(62)も「1人ひとりを大切にすべきといった観点があり、多様性が言われる現代にも当てはまります」と強調する。
2回目以降も大合唱団を編成し、74年は田辺高校が、75年には耐久高校が加わり、大フィルの朝比奈隆さんの指揮で歌ったほど。さらに96年の第25回は、過去最高の300人を超える合唱団を組織し、盛大に開催した。所用で、この回のみ客席で見守った山本さんは「力を合わせるとこれだけ歌える。真剣にやれば、できないことはないと実感しました」。
また、2001年からは「夏の大合唱」と題し、第九以外に挑戦する機会を設け、幅を広げた。
一方で、近年は団員が70人ほどしか集まらず、観客も減少傾向で、演奏会のたびに赤字が出ているのが実状だ。花光さんは「市民の力で継続してきましたが、これ以上は難しい。文化向上に貢献できたと思う」と自分に言い聞かせる。西岡さんは「可能であれば、この合唱団を母体にクオリティの高い演奏会をやりたい」、山本さんも「歌い続けたい気持ちはある」と明かす。
花光さんは「基本的人権を読んだシラーの詩に曲を付けたのが『歓喜の歌』。今年も一番大切なことを伝える演奏会にしたい」と前を向いている。
第九合唱団団員募集
8月25日㊐午後1時半、和歌山市和歌浦南のアートキューブで結団式。練習は金曜午後1時半の昼の部か、6時半の夜の部のいずれか。火土日にすることもある。会場は主に小人町のあいあいセンター。団費16000円、学生8000円。希望者は県第九合唱団(073・422・4225、フォルテ内)。
第50回第九演奏会
12月15日㊐午後2時半、和歌山県民文化会館大ホール。杉本優さんの指揮、京都市交響楽団の演奏で歌声を披露する。
(ニュース和歌山/2024年8月3日更新)