投手、指導者としてプロ野球、埼玉西武ライオンズ一筋に歩んだ和歌山市出身の西口文也さん(52)。今年から監督として采配をふるいます。昨年パシフィック・リーグ最下位に沈んだチームを、どう立て直し、どう戦う集団に仕立てるのか。目指す野球、強化ポイント、また、和歌山への思いを聞きました。

素速い決断で

      戦術考え〝ワクワク〟

──就任を要請された時の気持ちは。

 「球団から『チームの課題も戦力も分かっている、あなたしかいない』と言われました。心の中で、『オレしかいないのか』とほおが緩みましたが、自分で『どうすれば選手の力を伸ばし、勝てるチームにできるか』を考えた上で受けました」

──理想の監督像は。

 「思い描いたことはありません。ただ、ベンチでどっしり構え、自然体でいたい。目指すのは投手を中心に、センターラインを重視した守りの野球です。就任以来、『どうやれば何勝できるか』と戦術を考えるとワクワクしてきます」

──3年間のファーム監督時代は、何を一番に心がけていましたか。

 「『勝ちながら育てる』を実践しました。ファームで成績を残さなければ1軍には上がれません。選手とコミュニケーションを取りながら、長所を伸ばすことに力を入れました。監督としては、ゲームが動く中で素速く決断することを重視。1軍でも、そこは曲げないでいきます」

 

レギュラー争い

─投手力はともかく、昨年はとにかく打てませんでした。

 「投手は『先に1点取られるとしんどい』と考え、野手は『早く取ってあげたい』と気持ちがはやるのか、どこかチグハグでした。どのようにして相手より先に点を取って、いかに守りきるかです。打てるかどうかは投手との相性もありますが、打席で考えるのが大切。なお、いまレギュラーと考えているのは源田(壮亮遊撃手)だけ。後は横一線ですから、みんなが『自分がつかむ』との気持ちでがんばってほしいです」

──選手にアドバイスを。

 「自分はメンタルが強いと思っています。現役時代は『打たれる』と考えたことはありませんでした。マイナスイメージを持たずに投げ、『ここ』という試合で勝ってきた自負があります。投手も野手も結果を意識しすぎず、のびのびとやり、実力を出してもらいたい」

──パ・リーグ監督6人中、千葉ロッテの吉井理人さん、福岡ソフトバンクの小久保裕紀さんと、3人が和歌山出身です。

 「小久保さんから『和歌山、盛り上がってるでぇ』と聞きました。地元の人たちには、出身監督が率いるチーム同士の試合を楽しんでほしいと考えています」

──和歌山で思い出に残っているのは。

 「少年時代は楽しく野球をやってました。練習がない時も田んぼや児童公園で。県和商の時はメッチャ練習しましたね。秋葉山を駆け上がったり、砂浜を走ったりしたのが身になったと感じています。公式戦は、夏は3年間とも初戦敗退です。2年の秋季大会は、勝てば近畿大会に行ける試合で南部に負けてしまい、結局3位。甲子園とは無縁でした。個人的には、帰省するたび和歌山ラーメンを食べてます。もっと広まればいいですね」

西口文也(にしぐち ふみや)

1972年、和歌山市出身。西和佐小、高積中では野手。県和歌山商高の時に投手に転向し、立正大を経てドラフト3位で95年に西武ライオンズ入団。97年にはリーグ優勝に貢献し、最多勝、最多奪三振、最高勝率、MVP、沢村賞を獲得。その後もスライダーを武器に勝ち星を積み重ね、21年間で182勝をあげた。2015年に引退し、投手コーチの後、22年からファーム監督を務め、今年から1軍監督。

(ニュース和歌山/2025年1月1日更新)