テレビやパソコンで遊ぶ対戦ゲームを、競技としてとらえるeスポーツ。昨年、国際オリンピック委員会が「第一回オリンピックeスポーツ大会を2025年にサウジアラビアで開く」と明言したことで、一気に注目度が上がった。和歌山では、新たな文化の形成や地域活性化を目指し、民間が普及活動を先導している。これまでの動きを追った。
すそ野拡大を
将来のオリンピック種目採用をにらみ2018年、3団体で日本eスポーツ連合(JeSU)を結成した。同年は、アメリカ発の大型ゲーム大会が「EVOジャパン」の名称で国内初開催され、また、新語・流行語大賞に「eスポーツ」がノミネートされたこともあり、「eスポーツ元年」と呼ばれる。県内では20年に和歌山eスポーツ連合(WeSU)が立ち上がり、大会主催など普及に取り組んでいる。
WeSUの谷本翔太代表は「自分にできることを考え、好きなゲームを通じ、県内外のゲーマーに和歌山に興味を持ってもらうのがねらい」と熱を込める。
まず、すそ野を広げるため、イベント会場や商業施設では家族向けの、デイサービス施設ではシニア向けの体験会を開催。ゲームに触れることのなかった人へアピールを始めた。
また、海南市のサンコーと共に、海岸清掃とゲーム大会を組み合わせたトラッシュトーナメントを実施。22年に白浜アドベンチャーワールドが障害のある子と家族を招待するドリーム・デイ・アット・ザ・ズーで体験会を開くと、かつてゲームで遊んだ親世代が昔を思い出し、子どもと一緒に楽しんだほどだ。
谷本代表は「『ゲームは一人でやるもの』とのイメージが先行していますが、複数人で知恵を出し合い、目的を達成するスタイルのゲームも増えており、コミュニケーション能力や思考力が身につく」と言い切る。
競技力向上も
すそ野拡大と並行して競技面では、19年に谷本代表が結成したチーム「ニトロパンダ(現・和歌山インダミタブルパンダ=WIP)」がメンバー同士刺激し合い、国内外問わず各種大会で活躍している。世界的ヒットゲーム『ストリートファイター6』を使った徳島の大会で、ジャッシー選手が128人中2位、マレーシアでの格闘ゲーム『ギルティギア・ストライブ』大会で、レオ選手が408人中2位、スティーブン選手が3位と好成績を残した。
また、昨年7月には「地元で競える場をつくりたい」と、和歌山城ホールで第1回WIPカップを開催。県内外から集まった150人がし烈な戦いを繰り広げた。
このほか、紀美野町の慶風高等学校eスポーツ部に、スティーブン選手がコーチとしてかかわり、普及と生徒の技術向上をサポートしている。スティーブン選手は「部員には日々、課題を立てて練習に取り組むよう指導しています。これを解決しようとする意識が上達への道」ときっぱり。
谷本代表は将来、eスポーツを通じて、初心者もプロも交流できる拠点を作りたいと考えている。「ゲームを産業として確立させ、若者の県外流出阻止だけでなく、流入につなげたい。いつか『eスポーツといえば和歌山』と誰もが思うような〝王国〟を目指します」と目を輝かせている。
加えて昨年、県がeスポーツ推進プロジェクトを立ち上げ、活動支援や大会開催を視野に入れている。民間が先行した取り組みを行政が支援することで、和歌山のeスポーツ界に追い風が吹き始めた。
(ニュース和歌山/2025年1月4日更新)