有田市宮崎町の山あいを貫く有田みかん海道沿いのイタリアンレストラン、テスティモーネ。地震や津波など災害が起きた時に避難できる施設で、構想段階から市と建物所有者が防災協定を前提に進めてきた。オーナーの澤柳正子さんは「普段から活用してこそ、いざという時に拠点として生きる。開店から2ヵ月近く、ここが避難場所でヘリポートもあるとお客様に伝え、徐々に浸透してきた」と実感する。
店が建つ海抜160㍍の高台からは、北に有田市街、南に白崎や遠く太平洋を望める。箕島漁港に近く、2011年9月の台風12号による豪雨時は、住民が避難した。
澤柳さんはリクルートの社員だった5年前、同社が展開する地域活性化事業の和歌山担当となり、各地でワークショップや講演会を開催。有田市にもかかわり、人の温かさや食材の豊かさなど地域が持つ可能性の高さに引かれていた。
2年前、みかん海道に防災、観光拠点を考える市と、レストラン建設を視野に入れる一般財団法人再生ありだが、災害時の被災者受け入れ、飲食を提供する協定に向け取り組みを進めていた。財団はレストランのプロデュースを、市の活性化に熱心だった澤柳さんに依頼した。
市は昨年、レストラン隣接地にヘリポートとなる芝生広場や20㌧の貯水池を整備。各種会館や備蓄倉庫など防災拠点をつくりながら放置されている全国の事例を知る澤柳さんは、眺望の良さを生かし、地元の魚介や野菜、果物を使うレストランを開いた。
財団は今後、備蓄倉庫の設置を視野に入れる。澤柳さんは「例えば、缶詰を備蓄するなら、缶詰バーにして少しずつ消費し、入れ替えを進めるのも一案。将来は、みかん海道を地域の人が誇りに思える場所にしたいですね」と描いている。
写真=隣接するヘリポートを指す澤柳さん
(ニュース和歌山/2017年8月23日更新)