〝自分らしく生きる〟伝える

 子どもも大人も気軽に「性」について話せる社会を目指すSAYHELLO・WAKAYAMA(セイハロー・ワカヤマ、山浦理恵代表)が、昨年11月に3周年を迎えた。子育てに励む母親4人が、小学生と保護者向け性教育の場を手始めに、座談会や出張講座、今年1月には幼児向け教室と活動の幅を広げている。山浦代表は「より広い世代の人と『性』を語り合い、『生』の大切さを伝えたい」と意気込んでいる。

 セイハローは、「子どもの性について知る機会、話す場がない」と感じた山浦代表が2020年11月、兒玉里枝さん、助産師の眞砂真弥さん、布目あぐりさんの4人で設立。「『性を語ることは恥ずかしいことではない』と親が意識を変えることで、学校や社会が変わる」との思いから、まず、小学1~3年と保護者を対象に絵本や人形を使って性を説明する「いのちのおはなし会」を始めた。

 体のつくりや妊娠、出産の話から、おもりを付けての妊婦体験、子宮に見たてた柔らかい袋から産道を出る疑似体験を実施。〝性〟をきっかけに、命や人権など〝生〟について伝えてきた。

(左から)スタッフの兒玉さん、眞砂さん、山浦さん、布目さん。「性教育を難しく考えないで」と呼びかける。

 翌年には、発達に合わせ継続して学んでもらおうと、対象を小学4~6年にも広げた。二次性徴や、生理用品の吸水実験など、思春期の体や心の変化を科学的に紹介。生理の大変さを知り「お母さんや妹を大事にしようと思った」とアンケートに書いた男の子もおり、山浦さんは「『生』について認識を深める効果があった」と実感した。

 活動は口コミで広まり、昨年からは和歌山市鷹匠町の一乗院で「お寺de性教育座談会」と題し、性に関する疑問や家庭での取り入れ方を話し合う場を設けた。

 さらに今年1月、「早い年齢で取り組めばより素直に受け取ってもらえる」と、初めて幼児向け講座を開催。子どもらには、「知らない人が触ってきたら大声を出して逃げる」ことを防犯教育ゲームで実践してもらい、保護者には、「性を話すときは、子どもを一人の人間として尊重する」ことが重要だと伝えた。

 眞砂さんは「性教育は、単に体の仕組みや生殖などの事象にとどまらない人権教育。『自分らしく生きること』と伝えたい」。布目さんは「自分の体が大切だと知り、好きになることで、人を思いやることができます」と熱を込める。

 高学年になるほど講座に参加する子どもは少なくなるが、山浦代表は「今後は図書館やカフェ、学園祭に出向いて、中高生や大学生にも発信する。そうすることで、性に関する意識が少しでも変わるはず。テーマも更年期など一歩ずつ広げていきたい」と新たな目標を設定している。

(ニュース和歌山/2024年2月10日更新)